RV HISTORY
| 1956–1958 | モンローの音響研究 | ロバート・モンローが音と意識状態の研究を開始。1958年頃から本人が体外離脱と表現する体験を重ねる。 |
| 1971 | 名称と組織の誕生 | 「remote viewing」の呼称が使われ始め、モンロー研究所も設立される。 |
| 1972 | SRI研究開始 | パソフ、ターグ、スワンらがSRIで研究。CIAも夏から関心を持ち、支援へ。 |
| 1973–1975 | 初期の作戦的実験 | 遠隔地施設やソ連の研究拠点を対象とする試験が行われる。 |
| 1976 | IEEE論文 | SRI研究陣が遠距離情報伝達に関する実験をIEEE誌で公表。 |
| 1978 | GRILL FLAME | 米陸軍が組織内セッションを開始。フォート・ミードに実働体制が形成される。 |
| 1981–1984 | CENTER LANE | CRV訓練が進み、モンロー研究所のGateway/Hemi-Syncも補助訓練に採用される。 |
| 1985–1990 | SUN STREAK | 所管がDIAへ移り、作戦依頼と研究が継続。研究面ではエドウィン・メイが中心となる。 |
| 1989 | PSI TECH設立 | 元計画関係者が遠隔視を民間の調査・教育サービスへ展開。 |
| 1991 | STAR GATE | 関連活動がSTAR GATEの名称に統合される。 |
| 1995 | 公開と終了 | AIRが外部評価。CIAが継続を見送り、ワシントン・ポストなどが計画を大きく報道。 |
| 2002–2017 | 公文書公開 | CIAが約9万ページに及ぶSTAR GATE関連記録を公開・オンライン化。 |
| 現在 | 民間実践と検証 | 教育、コンサルティング、意識研究へ広がる一方、再現性と実用性をめぐる議論が続く。 |
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「透視」から、検証可能な実験手続きへ
遠方の場所や通常の感覚では知り得ない対象を心的イメージによって捉えるという発想は、古くから「透視」「遠隔知覚」などの名で語られてきました。しかし現代のリモートビューイングがそれ以前の神秘思想と異なるのは、対象を伏せ、観察者の発言やスケッチを記録し、後から実物と比較するという実験手続きを重視した点にあります。
「remote viewing」という呼称は1970年代初頭に定着しました。一般には、ニューヨークのAmerican Society for Psychical Researchで実験に参加した芸術家インゴ・スワンの提案を起点とし、SRIの研究者ハロルド・パソフとラッセル・ターグが論文と研究計画で広めたと説明されています。名称の発案者については回想資料に差があるため、「スワンが提案し、SRI研究陣が研究用語として定着させた」とするのが定説です。
1972年:SRI研究とCIAの関心
1972年、カリフォルニア州メンロパークのStanford Research Institute(現在のSRI International)で、物理学者ハロルド・パソフとラッセル・ターグがインゴ・スワンらを対象に研究を開始しました。冷戦期、ソ連圏で超心理研究が行われているとの情報を受けていたCIAは、その情報収集上の可能性と脅威を調べるため、同年夏から研究を支援しました。
初期研究では、別の場所にいる人物が選んだ建物、公園、施設などを、実験室に残った参加者が言葉やスケッチで記述していました。後には緯度・経度や参照番号だけを手がかりに、遠隔地を記述する試みも行われました。パソフとターグは1976年、研究結果をIEEE誌に発表しています。一方で、実験統制、評価方法、感覚的な手掛かりの排除、独立再現をめぐる批判も早くから存在しました。
1970年代後半〜1995年:名称を変えながら続いた政府計画
現在「スターゲイト計画」と総称される活動は、最初から一つの組織・名称で続いたわけではありません。CIA、米陸軍情報保全コマンド(INSCOM)、国防情報局(DIA)などの関与のもと、SCANATE、GONDOLA WISH、GRILL FLAME、CENTER LANE、SUN STREAK、STAR GATEなど、複数の名称と所管を経て継続しました。
米陸軍は1978年に組織内でのセッションを始め、メリーランド州フォート・ミードに実働チームを置きました。研究と訓練はSRI、のちにScience Applications International Corporation(SAIC)でも実施されました。CIAの公開資料によれば、関連記録は1972〜1996年に及び、約45箱、後に公開されたコレクションは11,985文書・89,901ページに達します。
計画の目的は、既存の情報収集手段を置き換えることではなく、行方不明者、軍事施設、兵器開発、地下構造、テロ・人質事件などについて、補助的な手掛かりを得ることでした。しかし、得られた記述には正しい要素と誤りが混在するという問題がつきまといました。
1995年:外部評価と計画の終了
1995年、DIAからCIAへ計画が移管される際、CIAはAmerican Institutes for Research(AIR)に外部評価を委託しました。評価に参加した統計学者ジェシカ・アッツは、実験データには偶然だけでは説明しにくい統計的効果があると論じました。心理学者レイ・ハイマンは、独立再現、方法上の問題、結果の解釈を理由に、超常的な能力が証明されたとの結論には同意しませんでした。
AIRの総括はさらに実務面を重視し、遠隔視の情報は曖昧で誤りを含み、単独で行動可能な情報の根拠になった例は確認できないとして、情報活動への継続利用を推奨しませんでした。CIAは計画を再開せず、政府支援下の一連の活動は終了しました。
ここに、この歴史の核心があります。実験室データに統計的な異常を認める見解と、情報活動としては信頼性が足りないという結論は、同時に存在します。「完全に証明された」「すべて失敗だった」のどちらか一言では、資料全体を正確に表せません。
世界で活躍したリモートビュアーとその成果
インゴ・スワン(Ingo Swann, 1933–2013)
芸術家であり、現代リモートビューイングの方法論形成に最も大きな影響を与えた人物の一人です。SRIの初期研究に参加し、座標を用いた実験や、知覚内容を段階的に記録する訓練体系の開発に関わりました。後に「Coordinate Remote Viewing/Controlled Remote Viewing(CRV)」と呼ばれる方法の基礎を築いた人物として知られています。
スワンの重要な成果は、特定の「的中談」だけではなく、遠隔知覚を、対象を伏せた状態で記述・記録・評価する反復可能な作業手順へ近づけたことです。1973年の木星に関する記述なども広く知られています。
パット・プライス(Pat Price, 1918–1975)
元警察関係者・地方政治家で、SRI初期研究の代表的参加者です。公園、道路、建物、水面など、遠隔地の基本的な形状を詳細に記述した実験が、SRIの1976年論文に掲載されました。同論文は、正しい形状記述と同時に、施設の用途を誤って推定した例も示しています。
1974年には、CIAが指定したソ連セミパラチンスクの研究施設を対象とする実験に参加し、大型構造物などを記述したと報告されました。この事例は政府の関心を強めた「成功例」として頻繁に紹介されますが、照合時期や評価方法には議論があるため、「SRI・CIA資料が成功例として記録した案件」と明示するのが適切でしょう。
ヘラ・ハミッド(Hella Hammid, 1921–1992)
写真家で、特別な超能力者としてではなく研究に参加した、いわゆる「学習者」側の代表です。SRIのアウトバウンド実験で遠隔地の特徴を記述し、経験のない一般参加者でも成績が出る可能性を示す事例として扱われました。彼女の参加は、RVが少数の著名な「サイキック」に限定されるのか、それとも訓練可能な技能なのか、という後の研究テーマにつながりました。
ジョセフ・マクモニーグル(Joseph McMoneagle, 1946–)
米陸軍の実働チームで「Viewer 001」と呼ばれた人物です。1978年からフォート・ミードの計画に参加し、多数の情報要求に対応しました。最も有名なのは、1979年にソ連で建造中の大型潜水艦について、その形状や進水時期を記述したとされる案件です。1995年のワシントン・ポストは、計画側が挙げた成功例として、18〜20本の発射筒と大きな平坦部を持つ新型潜水艦を予測し、約120日後に類似する潜水艦が確認されたと報じています。
マクモニーグルは軍務上の功績によりLegion of Meritを受章しています。ただし勲記の表現は機密情報支援全般に関するもので、個々の超常的能力を科学的に認定する文書ではありません。潜水艦案件も、後年の報道と当事者記録では高く評価される一方、AIR評価は、計画全体として遠隔視のみを根拠に行動した事例を確認できないと結論づけています。
ポール・H・スミス(Paul H. Smith, 1952–)
米陸軍情報将校として1983年にCENTER LANEへ参加し、インゴ・スワンのCRV訓練を受けました。作戦セッションだけでなく、訓練体系の文書化にも関与し、後に軍の方法論を民間教育へ伝えた主要人物の一人です。著書や教育活動は、機密解除後の歴史を知る当事者資料として価値があります。
リン・ブキャナン(Lyn Buchanan, 1939–2023)
米陸軍のCENTER LANE/SUN STREAK系統で訓練・運用・データ管理に携わりました。退役後はControlled Remote Viewingの教育組織を設立し、民間への普及に貢献しました。彼の成果として紹介される数値や作戦事例の多くは本人または関係組織の説明に基づくため、サイト上では「本人の記録によれば」と帰属を明示します。
COLUM-Another Story
モンロー研究所——意識訓練と軍の接点
The Monroe Instituteは、放送事業家ロバート・A・モンローが1971年に設立した非営利組織です。モンローは1950年代から音が意識状態へ与える影響を研究し、左右の耳へわずかに異なる音を提示するバイノーラル技術をもとに、後に「Hemi-Sync」として知られる音響プログラムを開発しました。研究所の主眼はリモートビューイングだけではなく、深いリラクゼーション、瞑想、睡眠、体外離脱体験を含む「拡張された意識状態」の探究でした。
米陸軍との接点は、機密解除資料で具体的に確認できます。CENTER LANEの訓練計画では、候補者がフォート・ミードで「Discovery」シリーズを使用し、適格者がバージニア州の研究所でGateway Programに参加、さらにロバート・モンローとの個別訓練へ進む段階が記されています。1983年度にはモンロー研究所関連の上級訓練に24,400ドルが支出された記録もあります。
ただし、GatewayとRVは同一の方法ではありません。RVが紙とペンを用いた段階的な情報記録手順であるのに対し、モンロー研究所のプログラムは、音響によるリラクゼーションと意識状態の調整を目的としました。軍では、RVを行いやすい集中状態をつくる補助訓練として利用された、と理解するのが正確です。
現在も同研究所はGateway Voyageなどのプログラムを提供し、ジョセフ・マクモニーグルも長年関わってきました。CIAウェブサイトで有名になった1983年の「Gateway Process分析文書」は、陸軍将校が作成した報告であり、CIAがGatewayの理論を科学的事実として認定した文書ではない点にも注意が必要です。
1995年、秘密計画が公になった日——CIAの評価報告とワシントン・ポスト
1995年11月、CIAがAIRによる評価報告を公開し、米国政府が約20年にわたり遠隔視研究へ資金を投じていた事実が大きく報道されました。ワシントン・ポストのR・ジェフリー・スミスとカート・スープリーによる記事「‘Psychic Arms Race’ Had Several Funding Channels」は、政府機関が過去10年間だけでも200件以上の依頼で遠隔視者を利用したこと、総支出が約2,000万ドルとされたこと、CIAが継続利用を支持しなかったことを伝えました。
同記事は、計画側が挙げた「比較的正確」とされた19件のうち、ソ連潜水艦、レバノンで拘束された米海兵隊員ウィリアム・ヒギンズ、リビアの化学兵器関連輸送の3件を紹介しました。同時に、AIR側がその評価方法に異議を唱えたことも記しています。つまりこの記事は、成功談だけでなく、なぜ政府が計画を終えたのかも併記した検証報道でした。
この報道が持った最大の意味は、それまで断片的に知られていた「サイキック・スパイ」研究を、固有の組織、予算、依頼件数、評価結果を伴う公共の歴史へ変えたことです。12月には同紙がマクモニーグルへの人物記事を掲載し、Newsweek、TIME、ABCなども相次いで報道しました。元参加者が実名で語り、書籍、講演、訓練コースが増える転機となりました。
PSI TECHの誕生とその活動
PSI TECH(日本語では「サイテク」「サイテック」とも表記)は1989年に設立され、軍で培われたとする遠隔視手順を民間の情報収集・コンサルティング・訓練へ展開した初期企業の一つです。創設期の中心人物として、元DIA情報将校でSTAR GATE系計画に関わったエド・デイムズ少佐と、元INSCOM司令官アルバート・スタブルバイン少将が知られています。
軍・政府計画ではCRV、ERV、自由回答型の手法など複数方式が併用され、同社はCRV(コーディネート・リモートビューイング)を再編した独自方式を「Technical Remote Viewing(TRV)」として提供し、ターゲットについて何も知らされないダブルブラインド、複数ビューアーのデータ照合、分析担当者による統合を特徴として掲げました。1990年代には教育用ビデオ/音声教材やセミナーを通じ、政府・軍の外にいる一般人が体系的手順を学べる形を整えました。この教材化は、リモートビューイングの民間普及における大きな転換点でした。
現在のPSI TECHは、個人、企業、政府向けの調査・コンサルティングを掲げ、犯罪、技術課題、市場、医療上の疑問、意思決定などへの利用を説明しています。ただし、これらの成果明の多くは、顧客守秘もあって第三者が検証できる公開資料は限られます。
1. [CIA STAR GATE Collection](https://www.cia.gov/readingroom/collection/stargate)
CIA、DIA、米陸軍の機密解除文書を検索できる中心資料庫。
2. [CIA: Ask Molly — Did CIA Really Study Psychic Powers?](https://www.cia.gov/stories/story/ask-molly-did-cia-really-study-psychic-powers/)
CIA自身による計画史と、1995年評価の簡潔な説明。
3. [STAR GATE Background Information(CIA PDF)](https://www.cia.gov/readingroom/docs/DOC_0005284227.pdf)
計画名称、期間、所管、記録規模をまとめた背景資料。
4. [An Evaluation of Remote Viewing: Research and Applications(AIR, 1995)](https://irp.fas.org/program/collect/air1995.pdf)
計画終了時の外部評価。統計的研究と情報活動上の有用性を分けて読むための必須資料。
5. [Puthoff & Targ, “A Perceptual Channel for Information Transfer over Kilometer Distances”](https://www.cia.gov/readingroom/document/cia-rdp81b00401r002600010013-2)
SRI初期研究をまとめた1976年のIEEE論文のCIA所蔵版。
6. [Project GRILL FLAME Background(CIA PDF)](https://www.cia.gov/readingroom/docs/CIA-RDP96-00788R001100080005-8.pdf)
米陸軍がSRI研究を知り、1978年に内部計画を立ち上げた経緯。
7. [CENTER LANE Approval Procedures](https://www.cia.gov/readingroom/document/cia-rdp96-00788r001700280006-9)
計画承認、予算、SRIおよびモンロー研究所への支出を確認できる。
8. [INSCOM CENTER LANE Project](https://www.cia.gov/readingroom/document/cia-rdp96-00788r001500090010-7)
CRVの段階、訓練環境、モンロー研究所を用いた上級訓練の説明。
9. [Semipalatinsk operational-target research report(CIA PDF)](https://www.cia.gov/readingroom/docs/CIA-RDP79-00999A000300100034-4.pdf)
パット・プライスによるソ連施設案件を含む研究報告。
10. [The Gateway Program — How It Works(CIA所蔵資料)](https://www.cia.gov/readingroom/docs/CIA-RDP96-00788R001700210040-8.pdf)
当時のモンロー研究所がGateway Programを説明した資料。
### 当時の報道
11. [The Washington Post: “‘Psychic Arms Race’ Had Several Funding Channels”](https://www.washingtonpost.com/archive/politics/1995/11/30/psychic-arms-race-had-several-funding-channels/1b4fd4b2-307e-48ac-ba7f-222f7aff0807/)
1995年の公開、予算、依頼件数、成功例と批判をまとめた主要記事。
12. [The Washington Post: “The Pentagon Peepers: A Psychic View”](https://www.washingtonpost.com/archive/lifestyle/1995/11/30/the-pentagon-peepers-a-psychic-view/1a197523-58bb-4803-84cc-d011e03de2b2/)
公開直後の文化的反響を示す同紙のコラム。
### 関係機関・当事者側資料
13. [The Monroe Institute — About](https://www.monroeinstitute.org/pages/our-purpose)
設立年、ロバート・モンローの経歴、現在の活動。
14. [The Monroe Institute — Gateway Voyage](https://www.monroeinstitute.org/products/gateway-voyage)
Gatewayの現行プログラム。健康上の注意事項も掲載。
15. [PSI TECH — About](https://psitech.net/about-pt/)
1989年設立、TRV、事業内容に関する同社自身の説明。第三者評価ではなく企業一次情報として掲載。
16. [International Remote Viewing Association — CIA Star Gate Archives Guide](https://www.irva.org/stargate-guide)
膨大なCIA文書から主要資料を探すための索引。
### 映画・文化
17. [C-SPAN: Jon Ronson book discussion — The Men Who Stare at Goats](https://www.c-span.org/program/book-tv/the-men-who-stare-at-goats/180367)
原作者によるノンフィクション作品の解説。
18. [WorldCat: The Men Who Stare at Goats](https://search.worldcat.org/title/56653467)
原作書誌情報。
マクモニーグル氏のRV実演動画